在カナダ日本国大使館大使 石川薫年始挨拶

 

 

 

 

 新年明けましておめでとうございます。

 

 平成24年は、東日本大震災からの復興の足取りを感じる一年となりました。日本国内では2月に復興庁が発足し、本格的な復興に向けた枠組みが整備されました。日本大使館としても、各総領事館と連携しつつ、震災復興の様子を伝える写真展の開催、被災地ゆかりの映画の上映会、復興支援コンサートの実施等を通じて、カナダの皆さまから頂いた支援に感謝申し上げるとともに、積極的に被災地の復興の姿につき発信して参りました。

 

 昨年3月にはハーパー首相が、ファスト国際貿易大臣、オダ国際協力大臣(当時)、ベアード外務大臣、リッツ農業大臣とともに訪日され、東日本大震災の被災地を訪れました。一行に同行していた私も、犠牲者のご冥福と被災地の復興を祈ってくださっていた姿に感銘を受けました。

 

 本年1月及び3月には、東日本大震災復興支援のための青少年交流事業「キズナ強化プロジェクト」として、カナダの高校生約100名が日本の被災地を訪問、また日本の被災地の高校生約100名がカナダを訪問する予定です。こうした交流が、日加の将来にわたる絆を深め、長期的な震災復興の礎となることを期待しています。

 

 日加両国関係について振り返りますと、昨年3月のハーパー首相訪日時には、野田総理(当時)との首脳会談の中で日加経済連携協定(EPA)交渉を開始すること、日加物品役務相互提供協定(ACSA)の交渉を加速させること等が合意されました。日加EPAは同年、11月に東京にて第1回交渉会合が開催されました。同協定の締結を通じて、互恵的な両国間の経済関係が一層促進されることを切に願っています。

 

 科学技術分野においては、昨年10月に京都大学山中伸弥教授がIPS細胞(幹細胞)の発見によりノーベル医学・生理学賞を受賞されるという、日本の科学技術力の高さを改めて世界に示す慶事がありました。この幹細胞研究の分野では日本とカナダの協力の歴史が古く、また、昨年1月にもオタワにて日本の科学技術振興機構(JST)とカナダ保健研究機構(CIHR)との新たな研究協力枠組みが署名されました。最先端の科学技術分野において、両国の協力が今後も一層進展することを期待しています。

 

 文化面においては、カナダ国内各地にて日本関連の特別展が開催され、大使館としても、日本文化の促進の観点から積極的に支援して参りました。オタワのカナダ国立美術館にて開催され約27万人が来場したゴッホ展では、ゴッホの作風に大きな影響を与えた日本の浮世絵約20点が同時に展示されました。ケベック・シティのケベック文明博物館及びモントリオールのポワンタキャリエール考古学博物館においては、昨年から本年にかけて二つの「サムライ展」が開催され、鎧兜等、貴重な日本の武具のコレクションが展示されています。

 

 今年は、日系カナダ人の名誉回復を目的としたリドレス合意から25年目の節目の年となります。日系カナダ人の方々のこれまでのご苦労とご活躍に対し、ここに改めて深甚なる敬意を表します。

 

 本年も、様々な分野・レベルにおいて、両国友好関係の促進に一層努力していく所存です。

 

 本年が皆様にとり益々ご健勝で幸多き年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

 

石川 薫

 

在カナダ日本国大使