在カナダ日本国大使館大使 石川薫年始挨拶

 

 

 

 年始のご挨拶を申し上げます。

 

 2011年は,日本とカナダにとって立法府の交流から始まりました。1月3日から7日まで,日本からは団長の村田吉隆衆議院議員,中川正春衆議院議員を始めとする5名,カナダからは加日議連のウィルファート下院議員とトカチャック上院議員の両共同議長が率いる7名の有力議員(注:文末参照)がバンクーバーに集い,日加友好議員連盟第17回年次総会が開催されました。私も議論を拝聴させていただきましたが,貿易や財政,国際情勢など,多岐に亘る課題について率直な意見交換が行われました。

 

 在カナダ大使として着任して5ヶ月が経ちました。この間,各州への訪問を通じ,太平洋・大西洋・北極に囲まれ,南北アメリカの北の一角を占めるカナダの広大さと多様性,英連邦の一員でありながら仏語圏にも属するという,歴史に根ざした国のあり方,先人達の知恵と苦労を糧に,時代の課題に取り組んできた現代カナダ国民の歩みを感じています。このようなダイナミズムと奥深さの共存するカナダと,日本がどのように友好を育んでいくのか,当地で活躍される皆様と共に考えながら,努力していきたいと考えています。また,日本から少しでも多くの方々が渡航され,是非ご自身でカナダに触れ,カナダの魅力を発見して頂けるようにと願っております。

 

 同時に,伝統が今も活きる日本についても,カナダの方々に幅広く知って頂きたいと思っています。まさに「温故知新」をテーマとした日本特別展「日本:伝統。革新。(JAPAN: Tradition. Innovation.)」が5月20日から10月10日まで,首都オタワ圏内にある,オタワ川を挟んで連邦議会の真向かいに位置する文明博物館で開催されます。日本と言えば,昨年は,小惑星探査機「はやぶさ」が月以外の天体から初めて物質を地球に持ち帰るという世界初の快挙を成し遂げ,また,鈴木・根岸両先生がノーベル化学賞を受賞されるなど,日本の科学技術の水準の高さが改めて世界に示された年でした。他にも,新たな医療の実現への可能性を秘めたiPS細胞の作製や,炭素繊維がエアバスA380やボーイング787に活用されるなど,日本の科学技術が世界をリードしている実例は枚挙にいとまがありません。日本とカナダの間でも,ボンバルディア社と三菱重工業が長年に亘る業務提携を続けていますし,国際宇宙ステーションでのロボットアーム「CANADARM」が日本の無人輸送システム(HTV)とのドッキングで活躍した映像は記憶に新しいところです。

 こうした中で,日本特別展は,カナダの日常社会にも浸透している最先端技術に基づいた日本製品の機能やデザインの秀逸さのみならず,それらが数百年前の日本を生きた庶民の粋と知恵に根ざしているという,実に興味深い事実を再認識して頂ける絶好の機会になることを期待しております。

 

 改めて思い起こしますと,日本とカナダの友好関係の源は,共に法の支配の下での法的予見可能性がある国だという根本的な点にあるのではないかと思われます。192ヶ国の世界の国々の中で,これは多くの国家に当然のように当てはまることではありません。日本とカナダはともに,議会制民主主義と,自由且つ秘密投票による多数党選挙を通じて政権をつくる原則的仕組みがあり,言論の自由が護られ,法の支配が確立されている,どちらかといえば数少ない国です。グローバル化が急速に進展し,摩擦や混乱が生じやすい時代だからこそ,法的安定性に立脚した国同士が手をたずさえ,よりよい未来を創っていくことが大事であり,そうした中から安寧と繁栄が確保されるものと考えられます。

 

 本年が皆様にとりまして素晴らしい一年となりますよう,祈念しております。

 

 

(注)参加議員は以下の通りです。

 

 日本カナダ友好議員連盟

 村田吉隆 衆議院議員

 中川正春 衆議院議員

 後藤祐一 衆議院議員

 川越孝洋 衆議院議員

 桑原 功 衆議院議員

 

 カナダ日本議員連盟

 ブライオン・ウィルファート下院議員

 デイヴィッド・タカチャック上院議員

 デニス・ベヴィントン下院議員

 トニー・マーティン下院議員

 クリスチャン・ウエレ下院議員

 マイク・ワレス下院議員

 テレンス・ヤング下院議員

 

在カナダ日本国大使 石川 薫