新年にあたり、昨年の東日本大震災・原子力発電所事故の被災地の方々のご苦労を思いながら、ご挨拶申し上げます。
思えば昨年来、日系人及び在留邦人の皆様は、被災地の方々に対するカナダからの支援の先頭に立って活動して下さいました。改めて篤く御礼申し上げます。祖国が苦難を乗り越えて力強く立ち上がるために、私どもも全力を挙げて参ります。
2011年は、人智と大自然のいずこに均衡があるべきかを考えさせられる年でした。そうした中で科学と人間についても考え、日加科学技術協力協定締結25周年とも相まって、両国間の科学技術協力を深め、もって未来志向の日加関係を強めることに努めました。このような未来志向の関係をさらに深めるべく、私どもも精一杯努力して参る所存です。
この機会に、両国関係の最近の状況につき皆様に報告させて頂きます。
昨年12月14日、野田総理とハーパー首相は電話で会談を行い、日加共通の関心事項について意見交換を行いました。その中で、日加間の包括的経済連携協定(EPA)共同研究を2012年1月に開催して、共同研究報告書を完成させ、交渉を開始できるよう取り組むことにつき意見が一致しました。また、両国がTPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る旨表明したことについても意見交換を行いました。
安全保障分野では、昨年8月に開催された第1回日加外務・防衛次官級対話において,自衛隊とカナダ軍との連携促進が重要であることで一致し,日加物品役務相互提供協定(ACSA)の締結交渉の開始について合意するなど,様々な分野における協力について議論が行われました。先の首脳会談においても、日加安保協力を更に進めて行くことが確認されました。
文化交流の分野では、昨年はカナダ国立文明博物館で日本特別展「Japan: Tradition. Innovation.」が約半年にわたり開催され大盛況でしたが、今年はケベック文明博物館(ケベック市)及びポワンタ・キャリエール考古学美術館(モントリオール市)において日本の武具を紹介する「サムライ展」が開催される予定です。こうした事業との連携に加え、カナダ各地における様々な日本文化行事の実施を通じて文化交流活動を促進して参ります。
今年は、第二次世界大戦中に罪もない日系カナダ人が、先祖が日本から来たというだけの理由でカナダ政府により強制収容、財産没収、大学や学校からの退学、市民権剥奪、故郷からの追放等の人権侵害を蒙った時から70年目の節目の年であると認識しております。この区切りを前に、昨年11月、1988年9月22日に日系カナダ人の名誉回復のためのリドレス合意を実現させた当時の首相、ブライアン・マルルーニ-氏に対し、リドレス合意並びに日加科学技術協力協定やワーキングホリデー協定の締結等の功績を称え、日本政府は旭日大綬章を叙勲いたしました。
本年も、これまでの日系カナダ人のご苦労とご活躍に改めて思いをはせながら両国友好関係の強化に一層努力する所存です。
本年が皆様にとりご健勝で幸多き年となりますようお祈り申し上げます。
石川 薫
在カナダ日本国大使
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