山野内勘二 駐カナダ大使より新年のごあいさつ

令和8年1月1日
 明けましておめでとうございます。令和8年を迎え、新年の御挨拶を申し上げます。
今年は午年です。天高く駆け上がる駿馬の如く、力強くしなやかに飛躍に満ちた一年となりますよう祈念しております。
 
 昨年は、カナダにとって激動の年でありました。1月のトルドー(前)首相の退陣表明に始まり、3月のカーニー氏の新首相就任、議会解散に続いて、4月の総選挙、5月のカーニー新政権の発足、6月のG7カナナスキス・サミットの開催のほか、年間を通じ、春・秋計2回のG7外相会合を含む計7つのG7関係閣僚会合やビジネスサミット(B7)等の計6つのエンゲージメント・グループ会合を開催する等、各分野で確実な成果を上げつつ、激動の年を確かな歩みで駆け抜けました。とりわけ印象に残っているのは、カーニー新政権が発足して僅か1か月で開催したG7カナナスキス・サミットです。カーニー首相の見事な采配ぶりに加え、議長サマリーのほか、重要鉱物アクション・プランやAI、量子等7つの首脳声明を発出したことは大変大きな外交成果であったと思います。カナダのG7議長国としてのリーダシップと貢献に改めて敬意を表したいと思います。 
 日本とカナダの二国間関係に目を転じますと、G7カナナスキス・サミットにおける日加首脳会談に続き、APECにおける日加首脳会談、G7ナイアガラ外相会合における日加外相会談等、ハイレベルの意思疎通が切れ目なく緊密に行われているほか、経済や安全保障の分野で新たな協力の展望を拓く、いくつかの重要な動きがありました。
 まず、6月末には、待望のBC州のLNGカナダプロジェクトによるLNG生産が開始され、日本を含むアジア地域への出荷が開始されました。年間1,400万トンのLNG生産能力を有するカナダ最大規模のLNGプロジェクトで、日本への輸送時間が約10日間であるなど、我が国及びインド太平洋地域のエネルギー安全保障にとってゲーム・チェンジャーと言える存在です。カーニー政権が推進する「主要プロジェクト」に選定された「LNGカナダ・フェーズ2」の実現に大いに期待すると共に、カーニー政権の「エネルギー超大国」構想にも注目していきたいと思います。
 7月には、情報保護協定の署名が行われました。国際社会は時代を画する変化に直面し、信頼関係にある国との間で機密性の高い情報を交換する重要性が高まる中、日加間の情報交換を促進する本協定を基に、安全保障分野における関係がより一層拡大・深化することに期待しています。また、日加防衛装備品・技術移転協定についても早期の署名を実現させ、強靭で信頼性のあるグローバルな防衛サプライチェーンの構築を含む防衛産業分野での協力強化が一層進むことを期待しています。
 9月には、史上初となる航空自衛隊F-15戦闘機によるカナダ訪問が実現し、日加空軍種協力の新たな一歩となりました。今回の訪問では、両空軍種による戦術面の意見交換や共同訓練に関する議論が活発に行われ、相互理解と信頼が大きく深まりました。カナダ側からは航空自衛隊の運用能力や機動力に対する高い評価が寄せられ、今後の協力拡大への強い期待が示されました。この歴史的な訪問をきっかけに、日加防衛関係の更なる発展に期待したいと思います。
12月には、経団連カナダ委員会による9年ぶりのカナダ訪問が実現し、オタワでは、カーニー首相を始め、アナンド外務大臣、ホジソン・エネルギー・天然資源大臣、ジョリー産業大臣、シャンパーニュ財務大臣、シドゥ国際貿易大臣及び連邦議会加日議連執行部との意見交換の機会に恵まれました。カーニー政権が重視する貿易の多角化や大型インフラプロジェクトの推進、エネルギー輸出といった課題等、更なる連携強化に繋がる有意義な意見交換ができました。また、経団連とカナダ・ビジネス評議会との協力覚書への署名が行われ、日加ビジネス協力の新たな枠組みが立ち上がったことは心強く、更なる前進に期待したいと思います。
 民間交流に関しても多くの進展がありました。大阪・関西万博を契機に、多くのカナダの方が訪日し、訪日人数が前年比20%増の70万人に届く勢いとも側聞しております(2025年12月現在)。カナダの「再生」をコンセプトとしたパビリオンでは、拡張現実(AR)を駆使した没入型の体験を通じて、カナダの自然美、多様性、歴史と革新性等を表現したほか、カナダの食や活気溢れるパフォーマンス等をショーケースし、多くの訪問客を魅了しました。
9月には北米初の北米国際よさこい祭りがアルバータ州レスブリッジ市で開催され、私も参加し、よさこいをきっかけとした日系コミュニティを超えた様々な人々との繋がり、また、繋がることで見えてくる新たな希望を肌で感じることができました。同祭りの翌日、レスブリッジ市で開催されたNAJC(全カナダ日系人協会)年次総会にも参加させていただきました。テーマは「繋がり」。日系人コミュニティの連携が引き続き強化され、更なる希望が育まれることに期待しています。
 10月から11月にかけては、カナダ唯一のMLBチーム「トロント・ブルージェイズ」が32年ぶりにワールドシリーズに出場しました。私も連日「ジェイズ」のユニフォームを纏い、オタワから同僚や地元の方々と共に熱い歓声を送りました。ドジャーズには惜敗を期しましたが、「ジェイズ」の今年の活躍を確信しています。カナダにおいては、1988年の開始以来、累計1万人を超える青年が参加し、日加間の民間交流に寄与しているJETプログラムについても、引き続き大切にしていきたいと考えています。
 紙面の都合上、日加関係の全ての進展をここに記すことはできませんが、様々な形で日加関係の増進に日々御尽力されておられる皆様の御活動に心から敬意を表したいと思います。日本とカナダは、厳しい地政学的な状況にあって、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有するインド太平洋を隔てた隣国、信頼できる同志国、重要な戦略的パートナーであります。二国間あるいはインド太平洋における様々な取組を着実に前進させ、日加関係を更なる高みに引き上げるべく、より一層力強く努力してまいります。本年も変わらぬ御支援をよろしくお願い申し上げます。